F1グランプリを観戦する面白みは、オーバーテイクシーンやブロッキングによるドライバー同士の駆け引きと、レース中に起こるトラブルによって生み出される。今回のGPでも、あらゆる面白みの要素が見られた。
まず、スタート。ハッキネン(マクラーレン)とジョーダン勢、フィジケラ(ベネトン)がスタートできなかった。また、トップのミハエル・シューマッハは、弟ラルフとモントーヤ(ウィリアムズ勢)に抜かれ、3番手に後退。その後方では、フェルスタッペン(アロウズ)がクルサード(マクラーレン)を交わす珍しい場面が見られた。ピットストップの回数の違いによって、燃料の積載量が違ってこういうことが起きたらしい。しかも、フェルスタッペンはフェラーリマシンにちゃんとついていくところが、いつものレースと違ってワクワクさせられた。
やがてラルフのマシンがスローダウンする。モントーヤは関係なくトップをキープしたまましばらく走り続けた。モントーヤの力強い走りに、筆者は“もう初優勝か?”と思っているうちに、モントーヤのマシンのミシュランタイヤがタレ始めた。ペースが落ち始めたモントーヤの背後にミハエルが迫って、A1リンク唯一のオーバーテイクポイント第2(レムス)コーナーで軽く接触、コースアウト。モントーヤが無理にブレーキングを遅らせた結果、こうなった。レース後の記者会見でミハエルは、“心中する気かと思った”と怒りをあらわにしていたが、今までもミハエルはヒルやビルヌーブ、クルサードにやってきたんだろうに、人のことを言えないのでは? もちろん筆者の目から見ても、モントーヤのブレーキングは遅すぎたし、ミハエルのマシンが多少モントーヤのマシンよりも前に出ていた。でも、ミハエルにびくともしないモントーヤの精神こそ、次期チャンピオンを予感させるものだと思う。
ただここでミハエルのフォローをしておくと、ミハエルに経験があったからこそ、お互いのマシンにダメージが出ない程度の接触にとどまった。ミハエルのよけるうまさは、拍手もんだ。
レースの中盤から後半は、バリチェロがレースを引っ張った。これでバリチェロは優勝モードかと思っていたら、ピット作業とバックマーカーの処理に手こずって、クルサードに逆転される。そして、ファイナルラップの最終コーナーで、バリチェロがミハエルに順位を譲るようチームオーダーが出てしまう。もし、1位がバリチェロで2位がクルサードだったら、フェラーリはチームオーダーなど出さなかっただろうに。たぶんそういう意味のことを、レース後の記者会見でバリチェロは言っていたんだろう。バリチェロの契約は、ミハエルと同等だと言われていたのにこのチームオーダーで、そうではないことが世に公表された。これでバリチェロは来年以降のフェラーリとの契約をしたくなくなったんだろうな。
筆者はこのフェラーリのチームオーダーに関する一件で、バリチェロに同情し、今年ミハエルを応援するのをやめることにする。次戦モナコから、がんばれウィリアムズのモントーヤ!!