最初のフォーメーションラップの後、筆者の期待していたスチュワート勢のマシンに異常、発生。エンジンから煙が上がったのだ。ハーバートは最後尾に、バリチェロはピットレーンのスタートとなる。2回目のフォーメーションラップのスタート時に、ミハエル・シューマッハがスタック。クラッチのつながりが、良くなかったみたいだ。昨年末の鈴鹿の悪夢再び。彼も、最後尾に回される。決勝がスタートするときに、ジャン・アレジがエンジンストール。波乱ずくめのスタートとなる。
予想通り、スタート後すぐにマクラーレン勢が3位以下を引き離しにかかる。昨年の開幕戦、マクラーレン勢が3位以下を周回遅れにしたという偉業を今年も見せつけてくれるのか。そう思っていた頃、1位快走中のミカ・ハッキネンを捕らえるテレビ画面ですぐ後ろに食らいついていたデビッド・クルサードが姿を消す。ピットへ向かっていたので、予定通りのピットインかと思ったら、そのままガレージに入っていった。筆者、動揺。
しばらくして、新規参入のBARを駆るジャック・ビルヌーブのマシンのリヤウィングが破損、クラッシュすると、セイフティーカーの導入となった。2、3周セイフティーカーの先導で各マシンが整列される。最後尾スタートのミハエルも再び隊列に加わる絶好のチャンスをものにする。セイフティーカーがピットに戻っていくと、レース再開。メインストレートで、1位のミカ・ハッキネンと2位のエディ・アーバインがストレートで力比べ。立ち上がりがよかったアーバインは、ぐんぐん伸びていく。一方、ハッキネンは失速。アーバインはあっさりと、ハッキネンを交わす。アーバインの立ち上がりが良かっただけではなく、ハッキネンのマシンもおかしかった。ピットリポートによれば、ハイドロ系のトラブルとか。マクラーレンのニューマシンテスト中、ロン・デニス監督は「開幕戦は、昨年型のMP4/13を使うかもしれない」と発言していたという報道があった。デザイナーのエイドリアン・ニューウェイが猛反対したと言うが、結果こうなってしまった。一発の速さだけでなく、信頼性も求められるのがF1なのだ。
ここから、アーバインは独走態勢に入る。アーバインの1位独走は、プレイステーションのフォーミュラ・ワン97でしか見たことがなかった(筆者がアーバイン役で!)が、それが現実となったのだ! 一方、ミハエルのマシンがおかしい。突然、フロントウィングが破損し、右のリヤタイヤがバースト。何とかピットに戻り、タイヤとウィングを交換、給油。しかし、トラブルはこれだけではなく、ステアリングホイール交換のために再びピットインを強いられる。昨年のハッキネンを思わせる、ピットスルーもやってしまう。このまま8位完走。
完走したのは、わずか8台だった。
高木虎之介の乗るアローズマシンのカラーリングには、驚いた。高木のチームメイトペドロ・デ・ラ・ロサが持ってきたという“REPSOL”というスポンサーのカラーリングが、鮮やかなオレンジだった。昨年のマシン発表時から、テスト中の写真までずっと真っ黒なマシンを目にしてきただけに、非常に驚いた。当然、高木が持っている“PIAA”のロゴもちゃんとマシンに入っている。高木選手、一時は入賞圏内を走っていたが、しかたなく、速いほかのマシンに道を空けてしまう。アローズのマシンは、モデルチェンジしなかった。よって、昨年の改良型を使っているのだが、信頼性が非常に高いことは証明された。今度は、エンジンにもっとパワーが欲しい。
前輪が4本グルーブタイヤになり、ブリジストン全チーム供給となった初戦。とても、見応えがあった。これから、第2戦に向けて各チームの進化が期待できる。今度は、フェラーリ勢がマクラーレン勢と予選で張り合って欲しい。また、各チームの張り合いを見たい。